小児科医は子どもの成長をどう評価するの? 〜成長曲線のお話〜
大人の体格を評価するときには、BMI(ボディマス指数)や腹囲、最近ではX線を使った体脂肪率の測定などが用いられています。 一方で子どもは、年齢によって成長のスピードや体重の増え方が違ったり、成長に男女差がある時期とない時期があったりと、大人のように一律の方法では評価が難しいです。 そこで小児科医は、お子さんの身長や体重のデータをもとに、「成長が順調かどうか」「何か病気が隠れていないか」を判断するための道具として「成長曲線」を使っています。 今回は、その成長曲線について分かりやすくご紹介します。 成長曲線とは? 成長曲線は、横軸に年齢、縦軸に身長や体重をとってグラフにしたものです。一枚のグラフの中で、身長と体重の両方の変化を見ることができて、お子さんの体のバランスを簡単に把握することができます。 小児科医は、母子手帳や保育園・学校での記録をもとに、お子さんの成長曲線を作成し、「今の状態」と「これまでの経過」の両方を見て、順調に育っているかを判断します。 下記は、日本小児内分泌学会が作成し、提供している男子の成長曲線(左)と女子の成長曲線(右)です。 男子の成長曲線 女子の成長曲線 実線は正常範囲を表しています。お子さんの成長がこの実線のどれかに沿っている場合、成長は概ね問題ないと判断します。 曲線の形から分かる成長のパターンと隠れた病気 成長曲線にはさまざまなパターンがあり、それぞれに意味があります。下のような例をもとに、私たち小児科医が何を読み取っているのかを説明します。 身長のパターン A:順調な成長平均の線に沿って大きくぶれずに育っています。このままいくと最終身長は171cm前後と予想されます。 B:小柄だが基本問題なし成長は順調で、下から1〜2本目の線の間で経過しています。平均より低く小柄な体格ですが、両親も小柄な場合(家族性の要因)、大きな問題はありません。 C:受診が必要な低身長基準の範囲を下回っており、成長のスピードも遅くなっています。成長ホルモンの不足など病気の可能性があるため、受診と詳しい検査が必要です。 D:急な身長の増加成長が急激に進んでいて、基準の線を大きく超えています。一見よさそうに見えますが、思春期早発症や脳の病気、肥満などが関係している場合があります。 E:急な成長の停滞成長速度が短期間で低下しています。脳腫瘍などの重篤な病気が隠れている可能性があるため、早めの受診が必要です。 体重のパターン F:体重の順調な増加平均的な増え方で、特に問題はありません。もし身長のパターンがAなら、体格のバランスもよいと判断されます。ただし、身長がBの場合は、体重が過剰だと見なされることもあります。 G:肥満傾向急に体重が増えている典型的なパターンです。食べ過ぎや運動不足などが関係していると考えられます。コロナ禍以降、こうしたパターンのお子さんが増えました。合併症(高血圧や脂肪肝など)の心配もあるので、早めに受診しましょう。学校検診で指摘されることもあります。 H:体重が増えなくなったこれまで順調に経過していた体重が、ここ数年ほとんど増えていません。今後は体重が減ってくる可能性もあります。身体的あるいは精神的な問題が隠れているかもしれないので、この場合も早めの受診が必要です。 このように成長曲線は、子どもの成長を評価するだけでなく、病気の兆候を見逃さないためにもとても重要なツールです。 母子手帳に載っている成長の記録でも十分ですので、一度ご家庭でもお子さんの成長曲線を見直してみてください。 そして、気になることがあれば、いつでもお気軽に当院までご相談ください。